而今・十四代が定価で買える店
日本酒雑記

ヤフオク・メルカリで販売される日本酒の知られざる裏側

ヤフオク・メルカリで日本酒は買わない方がいいですよという記事を以前書きました。しかしこういったオークションやフリマを積極的に利用している人もいます。

利用というのは出品者・落札者両方の立場がありますね。
私はオークションで日本酒を買うことはありません。買おうとしたことはあります。その時に経験したことと、知人を通して「オークションは単純な売買だけではない」ということを知った話を紹介致します。

人気銘柄の地域限定版の出品者が酒屋?

メルカリで見つけた酒屋っぽい出品者

出品物を見ていると珍しい酒がありました。人気のある銘柄の地域限定版です。しかしよく写真を見ると、

「あれ?この写真の隅っこの方にかすかに映っているの業務用の冷蔵庫じゃん。どうみてもリーチインなんだけどなんでだろう?」

明らかに酒屋で撮影したと見られる出品写真を掲載している出品者を見つけたことがあります。それに酒が陳列してある棚もかすかに見切れています。酒屋で撮った写真を掲載している出品者?なぜ酒屋で撮影できるのでしょう?酒屋さんじゃないですよね?いや別に免許持ってるんだから酒を売ってもいいんでしょうが、その出品している酒ってそんなに市場に流通してないですよね?地域限定銘柄ですから。その値段は定価の何倍でしょうか?3倍?
次々と疑問が湧いてきます。個人で購入したお客さんが店で撮影できるでしょうか?ありえません。大抵の酒屋は店内撮影禁止の張り紙があります。ではネット販売用の写真を出品者が借用したのでしょうか?地域限定酒ですのでネット販売されていません。

※リーチイン の写真です。

わからないことは聞いてみよう!

とりあえず私が気になるのは保管状態です。個人出品であろうが酒屋の出品であろうが鮮度が良ければ構いません。冷蔵庫に保管していないと日本酒は劣化します。保管状態はどうなのか?詰め日(日本酒を瓶詰めした日)はいつなのか?私は人気酒の地域限定銘柄に興味があったので購入するつもりでしたが、保管状態が気になっていましたので質問しました。しかしこの出品者はやたらけんか腰で、

「何のことなのかよくわからない。何が言いたいんだ?警告のつもりなのか?」

なんていう人気酒を取り扱う酒屋の気難しい店主そのものの対応をする出品者でした。警告???私が出品者に何を警告する必要があるのでしょうか?保管状態を確認しているだけなのに意味不明です。

そもそも仮にこの出品者が酒屋だとするならば免許を持っているのだから問題はないはずです。厳密には県内のみか広域に販売できるのか免許の種類に違いはありますが、そうだとしても免許があるのだからネットで販売するのに何の問題があるのでしょう?
酒屋ですから品質管理は問題ないでしょうが、そもそも酒屋かどうか分かりません。定価以上の価格だからでしょうか?酒屋じゃないとしたら?ちょっと考えにくいですが酒屋じゃなくて個人だったとしたならば保管状態を聞くことは警告になるのでしょうか?

有名な蔵元の私の知らない銘柄だったので、高くても買いたいなと思っていました。私としては東北まで買いに行く時間や交通費を考えると3倍の値段でも問題ありません。酒屋なら管理もしっかりしているだろうし、個人よりも良いだろうと思っていましたが買う気は失せてしまいました。

地域限定だからよその地域の人に高く売るの?

しかしこの出品者が酒屋だったとしたら、抽選をやったり抱き合わせをしたほうが得ですよね?なぜ出品する必要があるのでしょう?そもそも酒屋かどうかすらわからなかったのでここから先は私の想像です。

地域限定の銘柄は地元の人には珍しくもないのでしょうが、私のような他の地域の人にとっては価値があります。なぜかというと特約店はネットで販売していないのです。地域限定ですから。他にもたくさん出品者がいるところを見ると地元の人は手軽に購入できているようです。そう考えると店頭で抱き合わせても意味がないですよね。抽選する必要もありません。地元の人には珍しくないようですから。そう考えると店がメルカリに出していたとしてもおかしくはないですね。

地元の人は普通に買えるから店で売るよりもメルカリで高値で売ったほうが稼ぎにはなります。酒屋が定価以上でメルカリに出品することは違法では無いでしょう。しかしおそらく蔵元との関係で問題があるのではないかと思われます。定価より高いからと言って私が文句を言えるようなものでもないけれども、他に商慣習上の重大な問題がありそうだと思われます。短期的にみれば稼げますが長期的に見るとどうなんでしょうか?もちろんこれは酒屋が出品者だった場合の話です。

ヤフオク・メルカリには珍しい酒が出品されます

珍しい酒は高騰します。珍しいというのはやはり特約店限定とか地域限定ですね。焼酎ですが飛行機の国際線限定酒というのもあります。あるいは料飲店限定とかイベント限定で関係者のみに贈呈なんて酒もあります。昨年、とある銘柄の特約店にずっと「蔵元開業200周年記念」の酒がオブジェのように整然と並んでいました。しかし普通そういった限定酒は存在すら知らないうちに売り切れてしまいます。どんな酒があるのか、存在すらも知らない酒があるのではないかと、私はたまにヤフオクやメルカリで日本酒を眺めます。しかし購入には至りません。

ヤフオク・メルカリで日本酒を買わない理由

この時はどう考えても酒屋が出品者だと思っていました。酒屋なら保管に問題はないのでしょうが、個人の出品だった場合、普通の家庭の冷蔵庫に日本酒がどれだけ入るでしょう?日本酒は基本的に冷蔵しなければ劣化してしまいます。そう考えると品質の面で難があるかなと思います。しかしそんな酒を積極的に購入する人もいます。それはどんな人でしょう?もしかしたらあなたもそんな酒を知らないうちに飲んでいるかもしれません。

落札者の目的は?

居酒屋を経営する知人

私には友人はいません。なんてことはありませんが歳を重ねれば学生時代の友人との付き合いは減ります。社会人になると学生の頃のように、気軽に友達と言えるような関係を作ることは難しいですね。しかし毎日顔を合わせる職場の同僚よりも打ち解けれられる、気心の知れた知人もできないことはありません。主に趣味を介してのことが多いでしょう。今回はその知人の話です。知人の話をするフリをして自分語りをするわけではありませんよ。

その知人は知り合った時はサラリーマンでした。日本に数社しかないニッチな業種の会社に勤めているそうで、私は聞いたこともなかった会社ですが給料は平均以上、福利厚生も手厚いホワイト企業でした。どうやってそんな会社見つけたのでしょうか?コネではないそうですがそんな会社を見つけられる嗅覚が羨ましかったです。

しかし彼はいい環境に勤めているにも関わらず、虚無感を抱いていたようです。奥さんとは離婚して子供とも離れ離れで暮らしていました。会社での人間関係もうまくいっていないようで、やりがいの感じられないサラリーマン生活に嫌気がさしていたようです。虚無感・うまくいかない人間関係・しかし安定の暮らし。これらはサラリーマンなら誰もが感じる、サラリーマンならではの醍醐味ですね。

彼とは定期的に趣味の場で顔を合わせていたのですが、いつの間にか姿を見なくなりました。仲の良かった共通の知人によると、彼はどうにも会社勤めに我慢ならなかったらしく、退職して念願の居酒屋を始めたということでした。なぜ居酒屋が念願なのかは分かりませんでしたが、独り身とはいえ随分と思い切ったものです。かなり驚きましたが共通の知人とは近いうちに彼の店に行ってみようという話をして後日実際に彼の店を訪れました。

どんな居酒屋か?

彼が開業してから3ヶ月くらい経ってからだったと思います。そろそろ客足も落ちついて来ている頃だろうと見当をつけて店に出向きました。人通りが途切れないような場所で立地は非常にいいです。家賃は大丈夫なんだろうか?なんて余計な心配をしながらも久々に彼と再会しました。焼き鳥と簡単な料理を出す店で、開店して1ヶ月は客の入りもそこそこだったそうですが、随分と客足が鈍ってきているとボヤいていました。
「トマトを切るだけで350円」
「たったこれだけの枝豆が250円」
「豆腐切って出すだけで280円」
活き活きと居酒屋の素晴らしさを語っていたサラリーマン時代の彼とは随分と様子が変わっていました。私はその店に行ったのはそれきりでしたのでこの後の話は共通の知人から聞いた話です。共通の知人は家が店に近いこともあって、足繁く通っていたそうです。

客足が伸び悩むため集客のヒントを探しに

東京に出かけて居酒屋を巡ってヒントを得たいと、思い切って店を数日休みにしたそうです。そこで得たヒントは日本酒でした。彼が飲んだ日本酒がバカに美味しく、ラベルを見ると彼の地元産の銘柄だったそうです。しかし彼はその銘柄を知りませんでした。その時に地方には東京向けの酒しか造らない蔵元があるということを知ったそうです。ぜひ自分の店にも出したいと思ってその店主に仕入先を聞いたそうですが苦笑いされたそうです。「何回も蔵元に通って取引できるようになった特約店で、山ほど酒を買っている料飲店しか買えないんだよ」と言われたそうです。それでも諦められない彼は直接蔵元に連絡したそうですが「特約店を通しての販売しかしていないんですよ」とやんわり断られたそうです。

仕入れることができなくて頼った先は・・・

彼は何で思いついたのか知りませんが、その酒をオークションで落札しようと思いついたそうです。「日本酒の仕入をオークションで」というのはなかなか思いつきませんが、商売人に柔軟な発想力は重要です。その酒を店に置くようになってから、珍しい銘柄の日本酒が飲めるということで少ないながらも固定客がついて彼はホッとしたようです。しかも以前落札した出品者からちょくちょくオークション外でメールが届くようになり、様々なプレミア酒が買えるようになったということでした。自分から苦労して店や蔵と関係を築くことなく人気銘柄が手に入るようになったのです。しかし最も客が喜ぶ銘柄はそう簡単には手にはいりません。そこで他の出品者からも購入するようになり、同じようにメールで注文して仕入れるようになったそうです。

わかる人にはわかる

固定客がついたのは良いでしょう。珍しい良い酒が飲めると聞きつけてお客さんが訪れるというのは彼が思い描いていた通りの展開です。しかしお客さんの中には当然日本酒に詳しい人も訪れます。「これどこで仕入れてるの?ちょくちょく通ってるんだから一本分けてよ」なんて聞かれても適当に誤魔化していたそうですが、ある時酔っ払ったお客さんに絡まれて誤魔化しきれなかったようです。

本来であればいろんな日本酒を特約店から仕入れて良い関係を築きながら、有名銘柄以外のいい酒を紹介できるような店に方向転換していれば良い店になったんじゃないのか?なんて思います。しかし迫り来る仕入先への支払い、借入金の支払い、仕込みの段取りに、スタッフの管理、天気なんていろんな心配をしているとそうもいかないんでしょうね。売り上げが天気に左右されるとか理不尽すぎます。

いまその店は・・・

残念ながら廃業しています。日本酒のせいではないでしょう。梅雨がしのげなかったのかもしれません。私はもう彼と出会った趣味の場からは遠ざかりましたので近況は知りませんが、彼はまたサラリーマンに舞い戻り以前よりも苦悩の多いサラリーマン生活を堪能しているようです。飲食業は廃業率がすごいですよね。参入障壁は低いのですがそれで稼ぎ続けるのは難しい。誰しも頭では分かっているはずですが、自分だけは違うと思い込みがちです。特に成功経験の多い人は妙な自信を持っているような気がします。その自信が良い方に出ることもあれば、彼のように悪い方に出ることもあるということでしょう。

本当にそんなことがあるの?

全て作り話です。

なんてことはないですが、嘘くさかったと感じたならばそれは実話を少し脚色しているからです。オークションというのは個人間の取引もあるのですが、一方でブローカーとか転売屋とも言われる人たちの、お客さん探しの場にもなっているということですね。出品者からするとオークション外で取引すると手数料を支払わなくて済みます。相手が商売をしていれば代金の取りっぱぐれもないでしょう。

落札する料飲店からすると値段は高いですが、人気銘柄をお金さえ払えば仕入れられる。それでお客さんを呼べるというメリットがあるようです。

今ヤフオクやメルカリに出品されている日本酒にはどんな背景があるのでしょうか?
そんなことを考えながら見ていると妙に生々しい気持ちになります。
しかし利用価値もあります。

  1. 限定の日本酒情報が得られる
  2. 人気銘柄の発売日がわかる

もっとあるかと思って番号を振ってみましたがあんまり無いですね。
我ながら驚きました。

最後に

くれぐれも保管状態が怪しい日本酒には手を出さないようにしましょう。
高い金を払ってまずい酒を飲むのは罰ゲームですね。
外で飲む時は?こちらで書いていますので参考にしてみてください。

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