而今・十四代が定価で買える店
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人気の酒が買える日本酒の頒布会(はんぷかい)は得か損か

抱き合わせ商法という言葉が流行ったことがあります。日本酒業界も人気のある酒は店が指定する銘柄を一緒に買わなければ買えないということがありました。でも「最近は露骨に抱き合わせするようなことは無くなったんじゃないの?」なんて思われる方もいるかもしれません。

では頒布会や年末年始の福袋はいかがでしょう?自分で選んだ酒を買える訳ではありませんから、抱き合わせと同じようにも思えてきます。しかも何かわからない酒を買うわけですから、福袋や頒布会については抱き合わせより条件が厳しいですね。何かわからない酒を買うのは飲み手としては買いにくいし、メリットが何もないようにも思えます。しかし本当にそうでしょうか?

福袋に関してはその場限りのものなので、まさに何が入っているのかわからないギャンブル的な要素が強いですね。では頒布会はどうでしょう?

抱き合わせよりも厳しい条件のように見えますが実際はそうでもありません。なぜかというと、頒布会には別誂(頒布会用の特別酒)が入ることが多いためです。届いた酒はあなたが飲んだ経験があって、あまり気に入った酒では無かったとします。しかし別誂(頒布会用の特別酒)を飲んでみて「あれ?この酒こんな美味しいの?」となることがあります。

日本酒は同じ銘柄でも酒米や精米歩合などの造りが異なり、味の方向性が異なります。そのためたまたま初めて飲んだ酒が口に合わなかっただけで「好みに合わないからもう飲まない」ということがよくあります。初めて飲んだ酒が運良く自分好みだったらいいのですが、そんな幸運はそんなにありません。

しかし別誂を飲んでみてその銘柄に対する印象が変わって、もっと色々飲んでみようということもあります。そういう特別な機会があるのが別誂が入っている頒布会です。私の場合は「くどき上手」はそんなに好きな酒ではありませんでしたが、別誂だけはとんでもなく美味しくて「くどき上手」に対するイメージが変わりました。

さらに頒布会の期間中や終了後に特別な酒の案内をする店もあります。頒布会のメリットはむしろこの二つの方がメインとも言えます。では特約店も飲み手も得をする。そんな頒布会について、どのようなものなのかを実際に購入した経験談を交えながら簡単に紹介したいと思います。

日本酒の頒布会とは

日本酒の頒布会とは、毎月一定の本数の日本酒を定期的に買う会のことです。内容は店により異なります。だいたい募集要項は下のような感じです。

  • 募集人数 不明
  • 継続期間 公表
  • 頒布される日本酒の銘柄 不明
  • 正確な金額 不明

募集人数

公表されるケースもあります。

継続期間

選べる店もあれば選べない店もありますが、どの店も期間だけは公表しています。

日本酒の銘柄

わからないケースがほとんどです。中には全ての銘柄を公表している店もありますが、わからない日本酒を数ヶ月間購入する場合もあります。これは不安ですね。

正確な金額

銘柄がわからないのだからわかりません。おおよその金額は事前に告知されますが何が届くかわからない上に金額もはっきりしません。

頒布会の例

4ヶ月間頒布会の例
  • 一升瓶 2本コース 約1万円 合計約4万円
  • 四合瓶 2本コース 約5千円 合計約2万円

※別誂(その店だけのオリジナル)が数本

どちらも合計8本

どんな日本酒が送られてくるのか内容は問い合わせ不可の場合が多いです。店によっては数本だけ明らかにしている場合もあります。そもそも頒布会を行う店も限られています。取り扱っている日本酒に人気銘柄がないと成立しないからです。

例えば十四代の特約店なら十四代が入っている可能性があります。而今でも同様です。それに期待して申し込むわけですね。しかし通常どんな商品を届けるのかは教えないので申し込む側は期待半分、不安半分です。

頒布会を行なっている酒屋の探し方

例えば而今の場合でしたら、

「而今 頒布会」

で検索してみましょう。いくつか出てきます。11月26日現在まだ募集中の店もいくつかあります。もう終了していますが全て銘柄を公表している店もありますね。一方で銘柄については一切お答えできませんという店もあります。

頒布会のリスクと不安について

たとえ話ですが、十四代の特約店の頒布会に申し込んだとしましょう。4ヶ月のコースで3ヶ月目になったのに十四代が入っていません。十四代を期待していたあなたは気が気でありません。すでに3万近い金を払っていますが、見たことも聞いたこともない銘柄との新しい素敵な出会いばかりです。しかもその新しい銘柄との素敵な出会いに、毎日乾杯していないと1ヶ月に一升瓶2本はなかなか消費しきれません。

健康診断の結果が悪かったあなたは酒の量を控えなければならないにも関わらず酒量が増えています。命を削って情熱的に十四代を待っています。「こんなはずじゃなかったのに」確かに十四代が入ってるとは告知されていません。しかし頒布会はもうあと一回しか残っていません。「最後の回に入るんだろうな?」不安でしょうがありません。

こんなことにならないかと思っていませんか?しかしこんなことは私は今まで経験したことがありません。だいたい客が望んでいるであろうメインの酒は6ヶ月なら3回目、4ヶ月なら2回目までに届きます。万が一、客が期待している酒を入れなかった場合は次から頒布会が成立しにくくなります。一年のうちで一定期間毎月決まった売り上げが見込める頒布会は、酒屋にとっても貴重な機会です。

頒布会の内容実例

しかしどんな酒が来るのかわからないのに数万もの金をつぎ込むのはなかなか勇気がいります。そこでとある而今特約店の頒布会で届いた銘柄を紹介しますので、どんな酒が届くか参考にされてみてはいかがでしょうか。

全て一升(合計約4万円)

  • 而今 にごり
  • 悦蔵
  • 笑四季
  • 早瀬浦
  • 菊鷹
  • あぶくま
  • 奥播磨

私はこの素敵な日本酒との出会いを大いに楽しみました。何が来るのかわからないということを楽しめる方なら申し込む価値があります。この時は私が目当てにしていた而今が最初にありました。しかし而今にごりでした。

他の店で買っていたので2本目です。まさか「にごり」が入ると思っていなかったので重複してしまいました。本当はにごりではなくて千本錦が入らないかな、なんて期待していたのですが、このように自分が購入していた酒と重複したり、希望の酒米では無いことが起こりえます。

頒布会に入っている間は定期的に日本酒が送られてきますから、量的にも自分の好きな酒はなかなか買えません。頒布会に申し込んでみようかどうするか悩んでいる方は、四合をやっている店で一度経験してみるのも良いかもしれませんね。

結局頒布会は得か損か?

頒布会はこれだけでは終わらないこともあります。むしろここからが本番とも言えます。店によりますが、頒布会に参加した方々に優先して人気のある酒を定価単品販売の案内をしてくれる店もあります。ここが肝心です。頒布会自体はメインのようでそうでもないのです。

私が参加したことがある頒布会は全てそのようなサービスがありました。もちろん無い店もあるでしょう。ここまでを総合して考えて、あなたにとって得か損かを考える必要があるでしょう。

主催者が酒屋では無い頒布会

私たちが申し込める頒布会は酒屋のものだけかというとそうでもありません。このような頒布会もあります。

酒屋の頒布会と何が違うかというと、酒屋は日本酒を売ることで生計を立てているプロが選んだ銘柄です。一方でこちらの頒布会は日本酒を飲むことに精通した日本酒ソムリエが選ぶ銘柄になります。

酒屋に並んでいる日本酒だけが全てではない

而今・射美などの現在の人気銘柄は、初めは地元で全く相手にされませんでした。そこで東京の市場に目を向けて東京のとある酒屋に持ち込んで商品を置いてもらって研鑽を積みながら今の地位を築いているわけです。日本酒を売るプロのはずが、地元の蔵の将来性を見抜けなかったわけです。

而今・射美も成功しているから良いものの、恐らく資金面や酒屋に置いてもらえないなどの事情で、美味しい酒を造るポテンシャルがあるにも関わらず陽の目を見ないで廃業していった酒蔵も多いのではないかと思います。日本酒の銘柄は約1万5千種類あるそうです。その中で私が知っている、あるいは飲んだことのある銘柄は100銘柄以下に過ぎないと思われます。全体の150分の1ですね。

「地元で有名な日本酒教えてよ」と知人に聞いてみたことがあります。全く知られていない酒が当たり前のように出てきます。新潟の知人には「柏露」ですと言われました。他には?と聞くと色々出てくるのですが全く知りません。新潟といえば八海山や久保田が全国区です。久保田とか八海山は?と聞くと全く飲まないそうです。じゃあ荷札酒は?村祐は?と私の好きな新潟の酒をあげてみましたがこちらは全く知りませんでした。

東京なら屋守はメジャーですで。しかし地方だと売っていませんし、存在自体知りません。他の県も同じように地元ではメジャーでよく飲まれていても、全国的には知られていない酒が数多く存在します。もしかしたらこちらの頒布会ではそういったまだ陽の目を見ない酒に出会えるかもしれない可能性がありますね。人気酒を追いかけるのに疲れた方や、自分の通う酒屋で目にしない酒も飲んでみたいという方にはオススメです。