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2019年 新政頒布会 5月

今月は4月5月6月と3回に渡って販売される、新政頒布会の2回目になります。

  • 販売時期 年に1回(4月〜6月)
  • 四合2本/月×3ヶ月=合計6本(6種類)
  • 価格 6本 12,000円 税込

それぞれの銘柄の詳細な解説書が添付されています。
ご存知の方が多いと思われますが、念の為用語の解説を記載致します。

日本酒度・酸度・アミノ酸度とは

日本酒度とは

酒の甘辛を判断する指標です。
水に対する比重で判断します。

マイナス 水より重い 糖分が多い 甘口
プラス 水より軽い 糖分が少ない 辛口

酸度とは

日本酒に含まれる酸の量です。

  • 酸度が高いと辛口
  • 酸度が低いと甘口

アミノ酸度とは

日本酒に含まれるアミノ酸の量です。
旨味やコクの指標になります。

アミノ酸度が高い 甘口 コクが深く濃厚
アミノ酸度が低い 辛口 淡麗辛口

陽乃鳥-改-

原料米 酒こまち
精米歩合 65%
アルコール度数 14.1%
日本酒度 -25
酸度 3
アミノ酸度 0.7
飲用適温 冷や〜常温
推奨飲用時期 2020年5月

陽乃鳥は貴醸酒です。貴醸酒とはどんな酒でしょうか?

貴醸酒とは、昭和48年に国税庁醸造試験所(現在は独法酒類総合研究所)で開発された汲水の代わりに清酒を全部または一部を用いて造る清酒をいい、甘口で濃醇な味わいを特徴とし、通常は長期熟成酒として色のある状態で提供されることが多い。貴醸酒という名は「貴醸酒協会」の商標名であり、現在、40社の会員が商品化しているが、協会に属さないメーカーの数社は「再醸 仕込み」「醸醸」「三累醸酒」などと工夫した名前を付けて商品化している。なお、「貴醸酒」の名付け親は開発者の故佐藤信博士である。 現在の清酒市場では、上記の特定名称酒がよく知られているが、貴醸酒は製造時に清酒を使用するので、これには属さず、それ以外の清酒(一般 酒と呼ぶことが多い)に該当する。

缶詰技術研究会
日本酒造組合中央会技術顧問 高橋 康次郎 博士の貴醸酒解説より

2019年度の「陽乃鳥」と「陽乃鳥-改-」の違い

製法 目的
2019年度の陽乃鳥 既存の酒(オーク樽貯蔵)をもろみに添加する より複雑な香味を目指すため
陽乃鳥-改- 既存の酒(陽乃鳥?陽乃鳥オーク?記載がありません)を亜麻猫のもろみに添加する。 甘みと酸味の高度な共存

「陽乃鳥-改-」は次の段階の陽乃鳥を模索しようという試みで、コンセプトは甘みと酸味の高度な共存だそうです。新政酒造 佐藤社長は「陽乃鳥-改-」は「陽乃鳥と亜麻猫のハイブリッド」と言えるのはないかと述べています。これは非常に楽しみです。しかし飲み頃は来年の5月です。オリンピック直前ですね。耐えられるでしょうか?こちらも前回に引き続いて高めの温度が良いようです。

亜麻仔猫-生酒-

原料米 酒こまち
精米歩合 65%
アルコール度数 9.5%
日本酒度 非公開
酸度 非公開
アミノ酸度 非公開
飲用適温 冷やして(5℃〜8℃)
推奨飲用時期 可能な限り早めに

亜麻猫は10周年になります。初期の亜麻猫は、白麹を用いて酒を造ることを目指したそうです。なぜかというと、佐藤社長は、使わなくてもいいのであれば醸造用乳酸を使わずに酒を造りたいという思いがあったようです。現在の一般的な酒造りにおいて、酒母の製法は醸造用乳酸を使った速醸で、そこで用いられる醸造用乳酸は原材料表記が必要ありません。原材料表記が不要であったとしても添加されていることは事実であり、佐藤社長はそこに違和感を感じたようです。そこで多量のクエン酸を生産する白麹を用いることで、醸造用乳酸を使わない製法の確立を目指したそうです(2014年まで。それ以降は生酛に移行したため白麹は不使用)そのあたりについては自身のブログに記載されています。

さて、「醸造用乳酸」について。
これは「製造上の必須のもの」と認められているので、酒税法上、原材料に表記しなくても
別にいいことになってます。

しかし、私のように、他業界からぽっと来た人間などに言わせると、どこか違和感がある。
正直「なんか添加物っぽいよね」という気持ちになるのです。
ワインだって「亜硫酸(二酸化硫黄)」は原料表記しているし、フェアじゃないよね。
という気持ちもありましたし。蔵元駄文より

なお、醸造用乳酸の原材料表記については
国税庁のHPに下のような記載があります。

問12 清酒の製造に際して、酒母に乳酸を加えた場合には、原材料名の欄はどのよう に表示したらよいですか。

(答) 酒母に加える乳酸は、雑菌の繁殖による腐造といった清酒の製造上の不測の危険を 防止するものです。こうした、酒類の製造の健全を期する目的で使用される必要最小量の物品は、酒税法上の酒類の原料として取り扱わないこととしており、清酒表示基準に定める原材料の表示は必要ありません。
また、この場合の乳酸は、「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法により」使用されるものであり、 食品衛生法上の添加物に該当することとなりますが、本件の乳酸は、「当該食品の原 材料に起因して)その食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、 その成分の量を明らかに増加させるものではないもの」であり、加工助剤に該当するため、表示を省略することができます。
したがって、清酒表示基準による原材料名の表示の必要はなく、また、食品表示法による添加物としての表示も免除されるため、「乳酸」の表示は必要ありません。 (食品表示基準第3条第1項、清酒表示基準3(1)、通達第2編第3条関係(共通事項)
7(2)、通達第8編第 86 条の6関係2(3)イ(ハ))
(参考)清酒の仕込み(もろみの製造)の際に使用する、酵母を純粋に培養させたものを酒母(酛) といいますが、この酒母の製造には雑菌の増殖を防止するための乳酸が必要となります。酒母 の製法には、乳酸を加える方法(速醸系酒母)と乳酸を加えずに酒母の中で乳酸菌に乳酸を作 らせる方法(生酛系酒母)の2通りの方法があります。
国税庁 食品表示法における酒類の表示のQ&Aより

なぜ酒造りに乳酸が必要なのかは
こちらに分かり易く記載されています。

酒母は、醪を安全に発酵させるために必要な優良酵母を培養しますが、野生酵母や細菌の混入を防ぐために、強い酸性(乳酸)下で造られます。
酒母は、乳酸の獲得方法により、生酛(山廃)系酒母と速醸系酒母に分けられます。
生酛系の酒母では、乳酸菌に乳酸を造らせるのに対し、速醸系では、醸造用規格の乳酸を使用しています。生酛系酒母では、乳酸菌が増殖するまで時間がかかりますので、製造期間は2倍かかります。
酒類総合研究所 お酒のはなし10号より

速醸のメリットとして酒造りの期間が短くて済むことや、蔵人の労力が少なくなるということがありますね。

ここまでが亜麻猫を白麹で造っていたという経緯です。では、亜麻仔猫はどうなのでしょうか?

特徴がいくつか挙げられいますので箇条書きにします。

  • アルコール度数10%以下という低アルコール酒
  • 素朴な味わいとフレッシュさを尊重するため生酒で提供
  • 製法上甘みが戻りやすいため、早めに飲むこと

こちらの亜麻仔猫は推奨飲用時期が「早め」飲用適温が「冷やして」ということなので、すぐに楽しめそうです。

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今月はすぐ冷やした状態で飲める亜麻仔猫があったのでようやく飲めそうです。しかし買ってしばらく経ってからが飲み頃というのは面白いですね。「しばらく置いてから飲んだ方が美味しいよ」なんて店の人がアドバイスしてくれる酒はありますが、割と曖昧です。

一方で新政頒布会は飲み頃の時期に飲用適温まで案内されているので、冷蔵保管に気をつけていれば安心です。今回も常時要冷蔵を意味する言葉が表現やデザインを変えながら箱に3ヶ所、瓶に2ヶ所記載されていました。常温で飲むことを推奨すると、うっかり部屋に放置する可能性があります。新政らしい気配りですね。さりげなく亜麻仔猫の生酒の文字の下にもあります。ラベルを透かしたら「要冷蔵」の文字が浮かび上がるかなと思って太陽光にかざしてみましたが、流石に透かしはありませんでした。

酒をあまり飲まない人に「この酒は来年の5月が飲み頃なんだ」なんて言いながら陽乃鳥-改-を見せるとどんな顔をするでしょう。もしかしたら日本酒に興味を持ってくれるでしょうか?それとも「こいつ危ないヤツだ」と思われるでしょうか?

いずれ他の銘柄でもこういった楽しみ方ができる酒が増えてくると楽しいですね。来月最後の頒布会がどんな酒なのか楽しみです。