而今・十四代が定価で買える店
日本酒雑記

2019年 新政頒布会 6月

ついに今年の新政頒布会も最後になりました。苦労して手に入れたのにも関わらず飲み頃が来年2020年5月になっている酒(陽乃鳥改)や2019年9月になっている酒(水墨)があり、「そんなことあるのかよ」と、ある意味楽しい思いをさせてもらいました。消費者に迎合することなくこだわりを貫く所に、今どきどの業界にもない造り手のプライドを感じます。合計4本のうち2本が飲めるのはまだ先です。そして最後の2本はどうなのか?非常に楽しみです。また、ノベルティが驚きの逸品でした。

今月は4月5月6月と3回に渡って販売される、新政頒布会の3回目になります。

  • 販売時期 年に1回(4月〜6月)
  • 四合2本/月×3ヶ月=合計6本(6種類)
  • 価格 6本 12,000円 税込

それぞれの銘柄の詳細な解説書が添付されています。
ご存知の方が多いと思われますが、念の為用語の解説を記載致します。

日本酒度・酸度・アミノ酸度とは

日本酒度とは

酒の甘辛を判断する指標です。
水に対する比重で判断します。

マイナス 水より重い 糖分が多い 甘口
プラス 水より軽い 糖分が少ない 辛口

酸度とは

日本酒に含まれる酸の量です。

  • 酸度が高いと辛口
  • 酸度が低いと甘口

アミノ酸度とは

日本酒に含まれるアミノ酸の量です。
旨味やコクの指標になります。

アミノ酸度が高い 甘口 コクが深く濃厚
アミノ酸度が低い 辛口 淡麗辛口

No.6 B-type 生酒

原料米 秋田県産酒造好適米
精米歩合 65%
アルコール度数 14.4%
日本酒度 −1
酸度 1.8
アミノ酸度 0.8
飲用適温 5℃〜8℃
推奨飲用時期 可能な限りお早めに

B-typeとは?

菩提酛(ぼだいもと)のBです。

No.6 G-type2

原料米 秋田県産酒造好適米
精米歩合 65%
アルコール度数 14.0%
日本酒度 −20
酸度 2.5
アミノ酸度 1.5
飲用適温 5℃〜8℃
推奨飲用時期 可能な限りお早めに

G-typeとは?

元禄仕込みのGです。

難しい解説

今回の酒もとてもこだわり抜かれた製法です。解説書を読んでいますが、私にとっては非常に難解で勉強が必要です。意味が理解できなければ書いても意味がありませんので、また近いうちにどんな酒なのかご紹介できるよう、頑張って理解に努めようと思います。

ノベルティー

非常に美しいグラスが付属していました。陽乃鳥がプリントされています。
これは最高のご褒美ですね。苦労して買った甲斐がありました。大事に使用します。

グラス

巾着もあります。

令和醸造年度カレンダー

「今回はやけに分厚い解説書だな。最後だから総括かな?」と思いながら内容を解読しようと開いてみるとカレンダーでした。商品が到着して1週間後に気がつきました。こういうことがあるから注意喚起されるわけですね。

カレンダーには蔵の様子やあたりの風景、美しい瓶の写真が載っています。また今回は詩や哲学者の言葉、映画の中のセリフなども添えられています。それらを読んでいくとなんとなく新政酒造の歴史や造り手の心情のようなものが伝わってきます。このカレンダーを作るのに相当な手間がかかっているのではないでしょうか?単なる綺麗な写真のカレンダーだけではないところに丁寧な職人の仕事を感じます。

醸造年度(BY)でまとめられているため7月スタートです。

田んぼが綺麗です。まさに夏を感じる1枚ですね。

どの工程なのかわかりませんが、米が保管されている光景も綺麗です。静けさが感じられます。

宮沢賢治の「農民芸術概論概要」の一節とともにこの写真が掲載されています。その一節を読むと新政酒造の理念のようなものが読み取れます。これを読んでなぜこんな名前の銘柄にしたのか理解できたような気がします。

11月は詩と写真の組み合わせが不気味です。突然禍々しいものを持ってきた意味を測りかねています。チャールズ・ブコウスキーという詩人を初めて知りました。いいものを造ろうと思うとこういう側面もあるということを社長は自覚しているということでしょうか?解釈が難しいです。しかしこの銘柄の名前も腑に落ちました。※写真はあえて掲載していません。

1月は綺麗ですね。誰がデザインしているのでしょうか?毎年の「新年純米しぼりたて」の瓶です。

2月は「旅の良さとは振り返って気づくものだ」とあります。これは社長が酒造り(旅)を始めてからの出会いでしょうか?様々な人が撮影された写真が載っています。

3月の写真は壮観です。実際に見たら迫力がありそうです。

4月は今までの頒布会の中の各年の1本ですね。ラベルがバラエティ豊かです。新政の瓶はデザインが良いのでとっておきたくなるのですが、こうして写真に収められていると瓶を保管する必要はありませんね。しかし今月のNo.6の瓶は2本とも美しいので飲み終わったら常温保管しておこうと思います。

もしかしたらと思って部屋を片付けていると、なぜか2017年の頒布会の空き瓶が2本出てきました。2年前の私も瓶をとっておきたかったのかもしれません。

左のラベルが2019の亜麻仔猫で右側が2017の亜麻猫改です。確かに比べると左の仔猫が小さいですね。細かい仕事でも抜かりがありません。

亀の尾のラベルが綺麗だなと思っていたら2017(左)も似ていました。2019(右)の方が色の面積が多い分グラデーションが印象的です。

令和元年醸造年度最後の月、6月は佐藤卯兵衛氏です。尊敬の念が感じられる1枚です。

要注意

今回のNo.6の瓶は非常に美しくデザイン性に優れています。そのため注意事項が増えています。特筆するべきなのはその注意喚起の表示です。

デザイン性の優れた注意喚起

パッと見で要冷蔵と記載していても見慣れてしまうと風景になってしまいます。意味のある文字を書いているのにデザインの一部のようになってしまい、伝えたいことが伝わらなくなるわけです。しかし新政酒造は違います。今回は四号瓶にタグのような紙を吊るしてひときわ注意を惹くような仕様になっています。「邪魔だな!!」なんて一瞬で引きちぎらようにしましょう。その理由は後述します。

要冷蔵・要遮光ではありません。関数の様に大きく「要」を使い注目を集めて、「!」(エクスクラメーションマーク)を使うことで強く訴えかけていることを視覚的にアピールしてきます。ここで「なんだ?」と一瞬視線が止まります。上段には「KEEP COOL」下段には「KEEP SHADE」です。私はSHADEってなんだっけ?といったん考えました。違う言語で表示されると見比べて意味を少し考えてしまいます。つまり注意を惹着付けることによって意味を認識させることができるわけですね。

しかし本番はここからで、下の注意事項を読むと愕然とします。これらの美しい瓶は「遮光性に乏しいため箱に入れたまま冷蔵保管ください」と記載されています。今冷蔵庫が酒でいっぱいになっている私は、「冷蔵庫は扉を閉めておけばライトは消えているから瓶のままでもいいのじゃないのか?」なんて考えが頭をよぎります。

しかしそんな甘い考えは許されないのです。私の様な一般家庭の冷蔵庫は頻繁に開け閉めを行うため温度も一時的ではありますが変動しますし、明かりにもさらされるわけですね。箱での冷蔵保存はなかなか厳しい要求ですが、今回は早めに飲むことが推奨されていますので、新聞紙を巻いて冷蔵庫に入れて早めに飲もうと思います。恐らく特殊仕様の箱では無いのでそれで十分だと判断しました。新聞紙は酒屋で購入した際に緩衝材代わりに使われているものです。決して〇〇新聞はとりません。押し紙問題もありますしね。

タグの裏に潜むさらなる注意喚起

タグの表書きだけ読んで満足していてはいけません。必ず裏側にも何かがあります。

こちらはひねりもなく普通です。しかし重要なことは上の三段でわかるようになっています。

ご購入後は速やかにお飲みください。
〜保管上の注意〜
〈常温厳禁・凍結厳禁〉

これが全てです。言いたいことが簡潔に目立つように記載されています。品質にこだわる新政ならではの配慮ですね。

追記6月29日

しかし何か不自然さを感じます。なんのひねりも無いと記していましたがそれは誤りです。常温厳禁?凍結厳禁?今更何を言ってるんだ?と考えます。常温で保管するわけがありませんし、ましてや凍結など論外でしょう。みぞれ酒を作るために不要な酒で実験はしましたがそれは例外です。

ふとひらめきます。「常温厳禁ー凍結厳禁=冷蔵保管」です。ここでも試されているわけですね。つまり不自然さを装って飲み手に考えさせた上で冷蔵保管を導き出そうとするという注意喚起です。違和感は感じていましたが全く気付きませんでした。

話は変わりますがコーヒーは鮮度が大事で、焙煎してから3日後〜14日後頃までが飲み頃とされています。3日以内だと味はスカスカです。一方で10日を過ぎるとはっきりと味が落ちてきます。お湯で抽出した時の粉の膨らみ方が違うので誰でもわかります。また飲む直前に豆を挽かないで粉で保管していると、酸化してしまい香りが飛んでしまいます。飲み頃を守らないと美味しいコーヒーは飲めないわけです。焙煎日がわからないコーヒー豆は買わないようにしましょう。粉売りもダメです。コンビニコーヒーは◯◯です。

話が少しズレましたが、何が言いたいかというと日本酒の場合もコーヒーと同様に鮮度に注意して、一番最後の飲み手が適切な品質管理をしないと造り手の味が届かないということですね。

そのために新政酒造は消費者である私に、あらゆる手段を使って品質管理の注意を促してくるわけです。新政酒造の注意喚起は「美味しい日本酒を飲んで欲しい。」
「そのためには飲み手も注意を払って欲しい」と言う意思の表れでは無いかと想像しています。

瓶の底に隠された秘密

ふと瓶の底にも何かあるのでは無いかと思い見てみましたが流石に何もありませんでした。ただ、山本とは数字違いのデザインなのに、秋桜や陽乃鳥改とは全く違うデザインなのが気になりました。デザインでは無く瓶の規格か製造メーカーの違いでしょうか?恐らく本質的には関係ないでしょう。

2020年の頒布会は買えるのか?

傾向を知って対策は早めにしておいたほうがいいでしょう。今から新政の特約店で毎週新政の酒を買っていれば、来年の3月20日頃に店の方に尋ねたら予約できるかもしれません。しかしそんな苦行はなかなかできることではありませんね。

抽選の店もありますが、当選率はとても低いでしょう。2019年は「当選確率10分の1」なんて店は無くそれ以下の確率ばかりでした。またポイントを使える店もある様ですが大量に酒を買うハメになります。今回探し回った時に特約店の方々に尋ねると、皆さん出荷量が減っているとおっしゃっていて、一般客まで回せないという店もかなりありました。

そこで来年はどうすればいいかというと、私は来年は諦めて今年で最後にしようと思っています。非常に残念ですが、今年十分楽しませてもらいましたしノベルティのグラスも手に入れることができました。来年は飲み頃の「陽乃鳥改」を飲むことを楽しみにしようかと思います。